Skip to main content

Posts

Showing posts from May, 2025

Grand Sumo 2025 May Tournament Day15 (Final)

 Hoshoryu Shows Yokozuna Pride, Hands Onosato His Only Loss of the Tournament Hoshoryu demonstrated the pride and dignity expected of a yokozuna, handing Onosato his only defeat this tournament.  The head-to-head record now stands at five wins for Hoshoryu and two for Onosato (with one of Onosato’s wins being by default), clearly favoring Hoshoryu. However, the content of their bouts tells a different story.  In nearly every match, it has been Onosato who dictated the pace and gained the upper hand, only to be ultimately brought down by one of Hoshoryu’s well-executed throwing techniques.  This pattern played out once again in today’s bout. Hoshoryu’s uwate-hineri (overarm twist-down) was expertly timed and executed, but it must be said that Onosato’s center of gravity was too high, and his ottsuke (press up on the outside of opponent’s elbow from below, as if twisting and lifting it) from the left lacked its usual sharpness. Throughout this tournament, Onosato has d...

大相撲 令和7年五月場所・千秋楽

豊昇龍が横綱の意地を見せ、大の里に今場所唯一の黒星をつけた。 過去の対戦成績は、豊昇龍5勝大の里2勝(うち1勝は不戦勝)ということで豊昇龍が圧倒している。 ただ、相撲内容は圧倒的ではなく、ほぼ毎回大の里が優位に展開しながら最後は豊昇龍の投げ技に屈する、というのもだった。 そしてそれは今場所も繰り返された。 豊昇龍の上手ひねりは見事だったが、大の里の重心が高く、左からのおっつけが甘かった。  今場所の大の里は、圧倒的な強さで横綱として十分にやっていける能力を示したが、まだまだ課題もある。 それは彼の伸びしろであり、課題を克服しながら成長していく姿を楽しもうではないか。   若隆景は6度目の技能賞獲得となった。 立ち合い当たるときの角度、足の運びが良く、脇と肘を締めて、差すにしても押すにしても手が下から出てくる。 アマチュアだけでなくプロの力士も若隆景の相撲を参考にしている。 以前は技術があっても、相手のパワーに屈してしまうところが見られたが、最近はそのようなことがない。 今場所12勝を挙げ、大関昇進に向けて最初の一歩を踏み出した。 安青錦は「きょう勝てば」という条件付きの一番を制し、敢闘賞獲得。 私は条件なしで敢闘賞と技能賞のダブル受賞でよかったのではないかと思ったが、三役力士から1勝もできなかったからそのような条件が付いたのだろう。 安青錦の強さの秘密の一つについて、日本人だからわかることがある。 実は、安青錦は日本語がとてもうまい。 だから、師匠や先輩のアドバイスがよく理解できるし、ストレスなくコミュニケーションを取ることができていると思う。  この記事の英語版はこちら https://kimitoshikoyanagi.blogspot.com/2025/05/grand-sumo-2025-may-tournament-day15.html

Grand Sumo 2025 May Tournament Day13

  Onosato Wins Back-to-Back Championships — Yokozuna Promotion All but Certain Onosato secured his second consecutive championship with a composed victory in the ozeki showdown against Kotozakura.  At the tachiai, he firmly absorbed his opponent’s initial charge, then applied ottsuke from the left to shut down Kotozakura’s attempt at migi-zashi (right-hand inside grip).  Applying steady forward pressure, Onosato slipped in his own right hand and drove his opponent out with a confident yori-kiri (frontal force-out), leaving no room for doubt. The promotion to yokozuna is formally decided through a special meeting of the Japan Sumo Association’s Board of Directors convened immediately after the final day’s bouts, followed by deliberation by the Yokozuna Deliberation Council (YDC).  According to the YDC’s internal guideline, a wrestler must achieve "two consecutive championships at the ozeki rank or equivalent performance" to be recommended for yokozuna.  Since the...

大相撲 令和7年五月場所・13日目

 大の里2場所連続優勝!横綱昇進も確定的   大の里が琴櫻との大関対決を難なく制し、2場所連続優勝を決めた。 大の里は立ち合い相手の当たりをしっかりと受け止め、左からおっつけて琴櫻の右差しを封じ、圧力をかけて相手を下がらせながら右を差して危なげなく寄り切った。  横綱昇進は、千秋楽の取組終了後に臨時の理事会が開催され、次いで横綱審議委員会での審議を経て正式決定となる。 横綱審議委員会には横綱に推薦する条件として「大関で2場所連続優勝か、これに準ずる成績」という内規があり、横綱審議委員会が設置されて以降2場所連続優勝した力士が横綱に昇進できなかった例が無いことから、大の里は場所後の横綱昇進に大きく前進した。まあ、手続きだけの問題だ。いったい誰が彼の横綱昇進を否決できるだろうか? 大の里はデビュー以来1度も負け越したことがなく、優勝はすでに4回、そして相撲内容はすでに横綱相撲だ。  デビューしてから所要13場所での横綱昇進は、年6場所制となった1958年以降で輪島の所要21場所を大きく上回る史上最速。 新入幕からの横綱昇進も大鵬の11場所を抜く所要9場所で史上最速。 我々は歴史の目撃者となった。 この記事の英語版はこちら https://kimitoshikoyanagi.blogspot.com/2025/05/grand-sumo-2025-may-tournament-day13.html

Grand Sumo 2025 May Tournament Day11

 The most anticipated bout for me today was Onosato vs. Wakatakakage. It appeared that Onosato’s strategy was to use a morote-zuki (double-hand thrust) at the tachi-ai to lift Wakatakakage’s upper body and then secure a migi-zashi (right-hand inside grip).  However, Wakatakakage had a sharp tachi-ai of his own.  He managed to get his right hand inside first and, at the same time, used his left hand to grab Onosato’s right elbow, effectively neutralizing the thrusting arm.  He then continued to apply pressure with a strong ottsuke (frontal force-out using the forearm) from the left, denying Onosato the chance to get his right hand inside.   Wakatakakage eventually worked both arms in and gained moro-zashi (a double inside grip), steadily driving Onosato to the edge. However, just as Wakatakakage attempted a shitatenage (underarm throw), Onosato closed the distance and countered with a yoritaoshi (frontal crush-out), toppling him. In hindsight, in that final ...

大相撲 令和7年五月場所・11日目

 今日一番楽しみにしていた取り組みは大の里vs若隆景だった。  大の里は立ち合いもろ手突きで若隆景の上体を起こしてから右を差す、という作戦だったようだ。 一方の若隆景は鋭い立ち合いで右を差すとともに左手で大の里の右ひじを掴んで突き手を無力化させた。 その後も左からのおっつけで大の里に右差しを許さず、逆に左腕を差し込んでもろ差しになって大の里を追い詰めていった。 しかし、若隆景が下手投げを打ったところに大の里が体を寄せて寄り倒した。 最後の場面では下手投げではなく、右手で前みつを取って食いつけばよかったのではないかと思う。 なお、複数の親方が、動画の37秒のところで大の里が左手で若隆景の頭をずらして体勢とテンポを変える動きを「非常に技術が高い」と評価していた。 初めての大関戦となる安青錦は、いつも通りの低い前傾姿勢からの攻めで琴櫻にまっすぐ引かせることに成功し追い詰めて見せ場を作った。 安青錦は土俵際あと一押しだったのだが、琴櫻を寄り切るにはパワーが不足していた。 1回目の左下手投げを打った直後に右の前みつを取っていたら勝てていたと思う。 豊昇龍は伯桜鵬を相手に薄氷の勝利だった。  立ち合い直後にまっすぐ引いたところにつけこまれて土俵際に追い込まれたが、足腰の強さで何とか残し、最後は伯桜鵬が自滅したことでなんとか勝利をものにした。 伯桜鵬は膝が内側に入る場面があり、今後注意しないと怪我をすると思う。 大栄翔に注目。 3敗しているものの、今場所の大栄翔は非常に内容がいいと思う。 今まではひたすら一直線に突いていって、その間に体が伸びて重心が上がり、相手に体を預けるのが早すぎて土俵際で引き技を食ってしまう相撲が多かった。 今場所は1回当たってから2回目、3回目と当たる間にいったん膝を曲げて重心を落として下から当たりなおすようになっている。 これから横綱・大関戦を控えており、要注目だ。 宇良が必殺技・伝えぞりを決め国技館を熱狂させた。 高安は手数の多い突っ張りで宇良を懐に入らせないように、宇良はなんとかそれをかいくぐって懐に飛び込む機会をうかがった。 我慢比べで勝ったのは宇良だった。 左を差し、土俵際まで攻め込むと、高安の左脇に頭をねじ込んで伝えぞりを決めた。 高安は1月場所に続いて同じ手を食った。 私でも宇良がそり技を掛けようとしているのがわかったのに反応できなか...

Grand Sumo 2025 May Tournament Day10

 Today’s Featured Bout: Aonishiki vs. Wakatakakage The most anticipated bout of the day was Aonishiki vs. Wakatakakage—two rikishi known for their aggressive attacks from a low, forward-leaning stance.   When wrestlers with similar styles face off, the outcome often aligns with their rank, and that was the case today. Wakatakakage didn’t simply reach for a right-hand inside  (migi-zashi); instead, he used a clever technique—lifting Aonishiki’s left elbow from below to open up the armpit and secure migi-zashi.   Without missing a beat, he followed up with a beautifully timed kata-sukashi (shoulder swing down). When the bout reached a brief stalemate during the initial pushing battle, it was Wakatakakage’s ability to transition and adapt that made the difference. Onosato Extends Winning Streak to 10 with Commanding Performance Despite his rock-solid sumo and current nine-bout winning streak, Onosato was once briefly driven back to the edge of the ring by...

大相撲 令和7年五月場所・10日目

今日注目の一番は、 安青錦ー若隆景だ。   お互いに低い前傾姿勢からの攻めが特徴。結果としては、同じスタイルの力士が対戦すれば番付通りの結果になる、という感じだった。若隆景はただ手を伸ばして右を差そうとするのではなく、安青錦の左ひじを下から跳ね上げて脇を開けさせるという工夫をして右差しを成功させた。そして間髪を入れずに肩透かしを決めた。序盤押し合いで膠着したところからどうするか、その展開力に差があった。 大の里、危なげなく10連勝 盤石の相撲で9連勝中の大の里だが、1度、阿炎の右のど輪で土俵際に追い込まれている。 そして、今日の相手は阿炎と非常によく似たタイプの一山本。 おそらく一山本は阿炎が大の里を追い込んだ相撲を参考にしたのだろうが、大の里の想定内だったように見えた。 一山本の右の突き手を待っていたかのように左手で押し上げ、それだけで一山本は横を向かされてしまった。 この時点で勝負あった。 大栄翔ー伯桜鵬 伯桜鵬は以前は左四つになって動きが止まることが多かったが、今場所は前に出ることを意識して相撲を取っており、ここまで8勝1敗で優勝争いに加わっている。 ただ、積極的に前に出ようという意識は感じるものの、前に出る力がどれほどのものなのかについては私は懐疑的だったので、彼が優勝争いをしていても記事にしてこなかった。大栄翔という相手はその力を図るのにもってこいの相手だった。 結果はご覧のとおりである。 しかし、伯桜鵬は大相撲デビューして所要わずか1場所で十両に昇進し、新入幕で優勝争いを演じ、「怪物」といわれた力士である。 私も彼には非常にセンスを感じており、これからの成長を楽しみにしている。  この記事の英語版はこちら https://kimitoshikoyanagi.blogspot.com/2025/05/grand-sumo-2025-may-tournament-day10.html

Grand Sumo 2025 May Tournament Day9

Onosato Handles Ura with Composure and Control Even when there is a clear gap in ability, there were two key things Onosato needed to be mindful of today: 1. Ura often lowers his head at the tachiai, tempting his opponent to push down on it and pull straight back—something to avoid.     2. Using that momentum, Ura might look to stage a last-minute reversal at the edge of the dohyō, especially if his opponent tries to force him out too quickly without securing a grip on the mawashi. Onosato understood this well. He didn't recklessly charge forward, nor did he pull straight back. Instead, he applied steady pressure, pivoted smoothly,  Ura before okuridashi (sending out from behind) him with precision. I had thought from the beginning that Ura’s brand of sumo wouldn’t work against the current form of Onosato—and sure enough, it didn’t trouble him in the slightest. Ichiyamamoto’s sumo style is almost a carbon copy of Abi’s—fast-paced morote-zuki (two-handed thrusts) from...

大相撲 令和7年五月場所・9日目

 両者に実力差があっても、大の里が注意すべきことは二つあった。                       ①宇良が頭を下げてくるのでつい頭を押さえてまっすぐ引かないこと。           ②その勢いを利用され、土俵際で逆転されないよう、まわしを引かないまま一気に出ようとしないこと。                                      大の里はそれをよく理解していた。 がむしゃらに出ていかず、まっすぐ引くこともせず、プレッシャーをかけてからピボット、宇良をいなして送り出した。             今場所の大の里に宇良の相撲が通用するわけがないと思っていたが、その通り、全く問題にしなかった。 一山本は阿炎のコピーのような相撲を取る。 そして、先場所は豊昇龍を破っている。 2場所連続で阿炎に敗れている豊昇龍にとってはイヤな相手だった。 やはり一山本は阿炎と同じようにもろ手突きの立ち合いだった。 しかし、豊昇龍はその腕を手繰って横を向かせて先手を取り、はたき込みで危なげなく勝利した。 一山本のもろ手突きが阿炎ほど強烈でなかったのかもしれないが。 若隆景は豊昇龍同様、阿炎の術中にはまってしまった。  過去の対戦では若隆景4勝阿炎5勝と若隆景が苦手にしている相手。 阿炎は右手の突きが特に強いので、若隆景の左手が阿炎の右肘や二の腕を下からあてがって(押し上げる)いたら、違う展開になっていたかもしれない。 安青錦は2日目からまるでプログラムされたように同じ相撲を取り続けて8連勝。 安青錦は相撲マニアで、過去の名力士から現役力士まで親方所有のDVDやYouTubeなどを何回も見て過去の名力士から現役力士(特に小兵力士)まで研究を重ねているそうだ。 現役力士では若隆景を尊敬しており、その若隆景と明日対戦することについて、「うれしい。 ついにここまで来たんだ。」と語っている。  この記事の英語版はこちら https://kimitoshikoyanagi.blogspot.com/2025/05/grand-sumo-2025-may-tournament-day9.html

Grand Sumo 2025 May Tournament Day8 ~ Onosato Stays Perfect at 8–0, Takes Sole Lead

 Onosato is in the midst of a yokozuna promotion run, but today’s sumo already had all the hallmarks of yokozuna-zumo—dominant, composed, and unshakable. In past bouts against Hiradoumi, Onosato had struggled when Hiradoumi managed to slip inside at the tachiai or gain the advantage in the sashite-battle. Today, however, even though Hiradoumi came in with a solid initial charge, Onosato absorbed it as if it were nothing, rebuffed his opponent with ease, and swiftly pushed him out of the ring.    After the bout, Onosato spoke calmly and without changing his expression: “I was able to see my opponent clearly, so that was good. I’m not thinking about what lies ahead or what’s happening around me—just focusing on what’s right in front of me. We’re only halfway through the tournament, so I’ll stay focused and keep doing my best from tomorrow on.” Already with two losses, Hoshoryu could not afford another defeat—not only to stay in the yusho (championship) race, but also to uphold the di...

大相撲 令和7年五月場所・8日目 ~ 大の里が8連勝で単独トップに

 大の里は綱とり挑戦中であるが、今日の相撲はすでに「横綱相撲」だった。 過去の対戦において大の里は平戸海に立ち合いでうまく懐に入られたり、差し負けて苦戦していた。 今日の平戸海の立ち合いは良かったと思う。 それでも何事もなかったかのように受けて立って相手をはじき返し、いとも簡単に押し出してしまった。  大の里は取組後「相手がしっかり見えていて、よかった。先のことやまわりのことは考えずに目の前のことだけを考えてやるだけ。まだ半分あるし、しっかり集中してあした以降も頑張る」と表情を変えずに淡々と話した。 すでに2敗している豊昇龍は優勝争いのため、横綱のプライドを守るため、負けられない。 意外な展開だった。 尊富士が立ち合いに変化した。 過去2回の対戦における豊昇龍の立ち合いはいずれも張り差しだったので、その対応策だったのかもしれない。 しかし、豊昇龍は冷静に対応してみせた。調子が戻った証拠だ。 豊昇龍は取組後「相手の立ち合いは全く予想していなかったが体に任せて反応が良かった。一番一番を大事にして集中してしていきたい」と語った。 この一番では取組中に行事が転倒するというハプニングがあったが、影響はなかった。 安青錦は自分のスタイルを貫き1敗を守った。 安青錦は低い体勢から突き押しでプレッシャーをかけ続け終始主導権を握っていた。 詰めも厳しかった。 初日こそ上体を起こされたものの、2日目からは前傾姿勢が崩れない。 まだ入幕2場所目であるにもかかわらず、すでに「勝利の方程式」を持っているのは素晴らしい。  安青錦は取組後「相手のことを考えると自分の相撲が取れなくなるから自分を信じてやっている。まだまだ、これからだ」と語った。 この記事の英語版はこちら https://kimitoshikoyanagi.blogspot.com/2025/05/grand-sumo-2025-may-tournament-day8.html

Grand Sumo 2025 May Tournament Day7

 Yesterday, I wrote: "Despite suffering his third straight loss, Takerufuji remains a dangerous opponent—someone that Onosato must not underestimate in tomorrow’s bout." And indeed, Takerufuji proved to be a formidable threat. Takerufuj's tachi-ai (initial charge) was sharp, with excellent angle and precision. At the moment of impact, Onosato had not taken a single step forward—his feet were square and stationary—whereas Takerufuji had already planted his second step immediately after the clash. Had he closed the distance more tightly, or employed a left hazu-oshi (a pushing-up motion under the armpit), he might have seized the advantage.  On the other hand, Onosato responded swiftly despite losing the tachi-ai. Notably, even when Takerufuji gained hidari-zashi (left arm inside position), Onosato did not panic as he might have in previous tournaments. Japanese version of this article here. https://kimitoshikoyanagi.blogspot.com/2025/05/77.html

大相撲 令和7年五月場所・7日目

 昨日の記事で、「尊富士は3連敗となったものの、明日戦う大の里にとって注意すべき相手であることには違いない。」と書いたのだが、やはり尊富士は危険な相手だった。              尊富士の立ち合いは鋭く、角度も良かった。立ち合い当たった瞬間を見ると、大の里は一歩も前進しておらず足が揃っているのに対し、尊富士は当たった後すぐに2歩目を踏み出している。もっと体を寄せて密着していれば、あるいは左をハズ押しにしていれば勝機があったと思う。 一方の大の里は、立ち合いで劣後しても対処が早かった。そして、相手に左差しを許したときに以前のように慌てることがなかった。 この記事の英語版はこちら https://kimitoshikoyanagi.blogspot.com/2025/05/grand-sumo-2025-may-tournament-day7.html

Grand Sumo 2025 May Tournament Day6

Onosato remains undefeated after dispatching Gonoyama with ease.  Though he is currently in the midst of a tsunatori (Yokozuna promotion bid), the sumo he’s showing already resembles yokozuna sumō—composed, powerful, and dominant. Many sumo fans would agree that Onosato’s forward-driving pressure is the best in the top division—by a considerable margin. On top of that, this basho he has overcome a major issue that had previously been pointed out: even when he fails to get a right-hand inside grip (migiyotsu), he no longer panics. His offense is fast, but not rushed or frantic. In this match, Onosato went for a right shitate grip and even managed to get his hand on the mawashi, but Gonoyama broke the grip by driving his elbow in to block (ottsuke).  In past tournaments, Onosato might have panicked in such situations—getting flustered, slapping down on his opponent’s head, or pulling unnecessarily and digging his own grave.  But this tournament, we’ve seen none of that. Tha...

大相撲 令和7年五月場所・6日目

 大の里は豪ノ山を一蹴して全勝をキープ。 大の里は綱とり挑戦中であるが、ここまでの相撲はすでに「横綱相撲」だ。 大の里の前に出る圧力は角界一、しかも飛びぬけているということは多くの相撲ファンが認めるところであろう。 それに加えて今場所はこれまでの課題とされてきたことを克服している。 それは、右差しに失敗しても決して慌てないようになったことである。 攻めは速い、しかし焦ったり慌てているのではない。 この相撲でも 大の里が右の下手を狙い、まわしに手がかかったものの、豪ノ山がそれをおっつけて外している。 今まではこうした局面で慌ててバタバタしたり、相手の頭を押さえて引いて墓穴を掘ることがあったが、今場所はそれがない。 しかし、まだ6日目で先は長い。優勝や綱取りが目前になった時でも同じ精神状態で同じ相撲を取ることができるのか注目したい。  豊昇龍は玉鷲との一番。 玉鷲は40歳とは思えない若々しい相撲を取ることで知られているが、今場所は様子が違う。立ち合いの当たりや突き押しに威力がなく、立ち合いは左にずれてそこからおっつける相撲が多い。 玉鷲の右ののど輪や突き放しは威力があるのだが、右ひじにサポーターをしており、相当痛いのであろう。豊昇龍にとってはイージーな取り組みだった。 なお、私がこの取り組み動画について、もっとも言いたいことは、取組以外の部分にある。   動画の46秒あたりの部分で観客が大声で叫んでいる。 力士が最も集中したい立ち合い直前のタイミングで声を出すのはマナー違反であり、絶対にやってはいけないこと。 皆さんも生で大相撲を観戦する機会があるかもしれないので、よく覚えておいてほしい。カメラのフラッシュも同様である。 尊富士ー琴櫻 尊富士の相撲は緻密さに欠けていた。 立ち合いでせっかくいい当たりを見せたのに、自分より大きい・しかも大関を相手に胸を合わせ、胸で押していた。 立ち合いの形そのまま琴櫻の胸やあごの下に頭をつけて相撲を取るべきだった。 自分より大きい相手に差されてしまったので上体が起き上がったのかもしれないが。 上手投げも強引で、自分の懐へ相手を呼び込むような投げになってしまった。 体の開きが足りなかった。 尊富士は3連敗となったものの、明日戦う大の里にとって注意すべき相手であることには違いない。 好調の若隆景は1敗をキープ 若隆景は前傾姿...

大相撲 令和7年五月場所・4日目 ~ 大の里が王鵬を圧倒し4連勝

 今日最も注目を集めた一番は、大の里ー王鵬に違いない。  大の里が過去3勝2敗と勝ち越しているが、ここ2場所は王鵬が勝っている。 対戦前の私の予想は、大の里が勝つとすれば、右を差し体を密着させて前に出る相撲、王鵬が勝つとすれば、激しく突っ張ったり頭で当たったりして大の里に右差しを許さない、というもの。 両者が土俵に上がり、立ち合い直前の仕切りを見て、私は大の里が勝つのではないかと思った。土俵に拳を付けるまでの流れにおいて一切迷った様子を見せなかったからだ。ただし、勝ち方は予想と違った。右を差そうとする動きはあったものの、右差しにこだわることなく突き押しで決着をつけた。綱取りに向けて勢いが付く白星だ。 取組後のインタビューで大の里は「初日から体の動きがいい。上体を起こさないように、しっかり考えて相撲を取った」と語った。 昨日王鵬に敗れた豊昇龍、今日の相手は直近3連敗中の阿炎。 豊昇龍は立ち遅れたうえに足が出ていなかったため阿炎にもろ手で先手を取られ、焦って押し返そうとしたところを引き落とされた。 取組後のインタビューで阿炎は「横綱は自分の動きを見極めてから対応しようとしたのだと思う」と語っていた。私の分析はそれとは異なる。 阿炎の立ち合いのタイミングは絶妙だった。先に両手を土俵に付き、豊昇龍が両手を下ろし始めた瞬間にチャージを始めた。豊昇龍があの状態から手を止めて「待った」をすることは不可能だ。たとえ後れを取っても手を付いて立つしかない。豊昇龍はインタビューを拒否したためなぜ立ち遅れたのか真相はわからないが、立ち合いに迷いがあったことは想像できる。今日の大の里とは対照的だ。 次は、私が個人的に楽しみにしていた一番、尊富士ー若隆景。尊富士の立ち合いの強い当たりと鋭い出足を若隆景は止められるのか? 動画の51秒あたり、お互いが当たる瞬間、若隆景の構えを見てほしい。若隆景は左脚をしっかりと前に出し膝がしっかりと曲がって重心が下りていて上体の角度もいいのがわかる。脇も締まっている。若隆景は右を差したい、尊富士は左を差したい、素晴らしい立ち合いで若隆景が差し手争いを制し、先に自分の形を作ることに成功した。 尊富士は左の上手を狙ったわけではなく、そうするしか選択肢がなかったのであろう。

Grand Sumo 2025 May Tournament Day4 ~ Onosato Overpowers Oho to Remain Undefeated at 4–0

 The most anticipated bout of the day was undoubtedly Onosato vs. Oho.  While Onosato led the overall head-to-head 3–2 going in, Oho had taken the last two matchups, making this a highly intriguing contest. Before the bout, my prediction was as follows: If Onosato were to win, it would be by getting his right arm inside (migi-yotsu), closing the distance, and driving forward in a tight body-to-body position. If Oho were to win, it would be by launching a fierce tsuppari (thrusting attack) and hitting on the head to deny Onosato the right inside grip. As both rikishi stepped onto the dohyo and entered the final moments of their shikiri (pre-tachi-ai ritual), I started to feel that Onosato might take this one. His demeanor showed not a hint of hesitation leading up to the tachi-ai—he appeared entirely focused and composed. However, the way he won was different from what I had envisioned. While he did make a motion to go for the right inside grip, he didn’t fixate on it—instead, ...

Grand Sumo 2025 May Tournament Day3 ~ Oho Gains Confidence with a Kinboshi Victory!

 Today, there’s really only one match worth focusing on: the bout between Hoshoryu and Oho. My pre-bout expectation was that Oho would try to replicate the style he used yesterday against Kirishima, while Hoshoryu might opt for the same hari-zashi (slapping and going for an inside grip) that earned him victory in January’s championship playoff. Oho’s tachi-ai unfolded much as anticipated, but Hoshoryu chose a different approach—leading with his head and going for a thrusting attack instead. Both rikishi had strong initial charges.  Oho hit at a good angle, and his tsuki-te (thrusting hands) extended with force and precision.  Hoshoryu, on the other hand, couldn’t move his feet forward under the pressure of Oho’s thrusts—his stance became square, and that’s when Oho capitalized with a hatakikomi (slap down). In the post-match interview, Oho was asked about his 6–9 losing record last tournament, which caused his demotion from the sanyaku ranks to maegashira. He was question...

大相撲 令和7年五月場所・3日目 ~ 王鵬、自信深める金星!

 今日、言及するのは豊昇龍ー王鵬の一番だけでよいだろう。 王鵬は昨日霧島を破った相撲と同じことをやろうとするだろう、豊昇龍は初場所の優勝決定戦と同じこと(張り差し)をやるのではないか、というのが私の予想だった。 王鵬の立ち合いは予想通りだったが、豊昇龍は頭から当たって突き押しという選択をした。 2人ともいい立ち合いだった。 王鵬は当たる角度も良かったし、突き手がよく伸びた。豊昇龍は、王鵬の突きに威力があったため足が前に出ず揃ってしまい、そこを叩かれた。 取組後のインタビューで王鵬は、先場所6勝9敗で負け越して三役から平幕に陥落したことについて、「先場所は(壁に)跳ね返されたが、どのように感じていたか?」と問われたのに対し「自分では跳ね返されたと思っていない」と言い切った。  一方の豊昇龍は無言を貫いた。 王鵬は明日、大の里と対戦する。 先場所の対戦では王鵬が大の里を圧倒した。

Grand Sumo 2025 May Tournament Day2 ~ Hoshoryu Wins Again with Commanding Sumo

 After defeating the formidable Wakatakakage on Day 1, Hoshoryu faced Wakamotoharu today.  While their pre-basho keiko (practice bouts) reportedly ended with a close 3-2 edge for Hoshoryu.  Today, Hoshoryu was dominant from start to finish—slapping with his left at the tachi-ai to break his opponent’s rhythm, immediately securing a morozashi (double inside grip), and wasting no time to drive forward for a textbook yorikiri (frontal force-out). It was the kind of sharp, decisive sumo reminiscent of his championship-winning performance in the January Tournament.  Just like yesterday, it seems clear that Hoshoryu had studied his opponent thoroughly during practice and came in with a clear game plan. In his post-match interview, Hoshoryu commented, “I was able to stay focused and execute exactly as I had planned,” and “I’ve been training properly—doing what I need to do, and that’s why I was able to win.” Today, Onosato faced Takayasu, who was in contention for the champ...

大相撲 令和7年五月場所・2日目 ~ 豊昇龍、盤石の相撲で連勝

 初日に難敵若隆景を下した豊昇龍、本日は若元春との一番。 若元春とは場所前の稽古で3勝2敗、内容的にも接戦だったと伝えられていたが・・・ 圧倒的だった。立ち合い左から張ってもろ差しになって間髪を入れず寄り切った。 優勝した初場所の相撲を彷彿とさせる鋭さだった。昨日同様、場所前の稽古を通して対策を考えていたようだ。 豊昇龍は取組後のインタビューで「集中してやれた。考えた通りに取れて良かった」「しっかり稽古している。やることをやってるから」と語った。 大の里は先場所優勝争いをした高安との一番。  はたき込みで大の里が勝利。立ち合い相手を押し込んでプレッシャーをかけていたこと、まっすぐ引いて懐に呼び込む動きではなく、体を開いて捌くという内容であり、押し込まれたり差し手争いに負けて慌てて引いたというわけではないので、悪くはなかった。 昨日、熱戦の末大関琴櫻を破った王鵬、今日の相手は元大関の霧島。  膝が曲がって前傾姿勢を保ったまま手も足もよく出ていた。明日の対戦相手は豊昇龍。非常に楽しみだ。 初日を落とした琴櫻は阿炎との一番。 阿炎の突っ張り、特に右ののど輪は強烈だった。最後の場面では、阿炎の右足が仕切り線(白線)で滑ってしまったのが確認できる。  尊富士は宇良を相手に素晴らしい相撲を見せた。 立ち合いで宇良が尊富士の脚を取りに来たが、尊富士は素早くその脚を後ろに引きいてかわすと素早く宇良の上体を突き起こして一方的に押し出した。 宇良の足取りをかわした反射神経、最後は胸から上ではなく腹を押す詰めの厳しさ(胸ばかり突いていると相手に手繰られる)。 なにより宇良のギミックを恐れていない。尊富士に負ける要素はなかった。

大相撲 令和7年五月場所・初日 ~ 大の里白星発進!

 今場所、相撲ファンが一番注目しているのは大の里の綱取りであろう。 初日の対戦相手は若元春。 過去の対戦成績は4-2とリードしているものの、内容を見ると大の里にとって危険な相手。 けんか四つであり、大の里が差し負ける展開も多かったために苦戦を強いられた。 左四つの相手に差し負けないこと、そして差し負けたときの対応力は、大の里が横綱になるための課題。 したがって今日の一番は重要な意味を持っていた。 大の里の作戦は明確だった。 差し手争いをすることよりも前に出て圧力をかけることを優先し、もろ手突きの立ち合いを選択した。 前に出て圧力を掛けながら相手の上体を起こして下から掬うように右を差す、非常に良い流れだったと思う。 先場所、新横綱としての場所が途中休場という結果になってしまった豊昇龍。 初日の対戦相手は若隆景。 直近3連勝中とはいえ過去の対戦成績は6-6のタイ。 大の里同様、緊張するシチュエーションで難敵を迎えることになった。 実は、豊昇龍は今場所前に若隆景と11番の稽古を行っていて、結果は豊昇龍の7勝4敗で、その内容はほとんど豊昇龍が右ののど輪で若隆景の上体を起こして攻める、という内容だったと伝えられている。 そして本場所の土俵でも同様の内容となった。豊昇龍は場所前の稽古で手応えをつかんでいたのであろう。 綱取りから一転、大関とは思えないような酷い内容の悪夢のような場所が続いた琴櫻は復活なるのか? 初日の相手は王鵬。王鵬は先場所負け越して関脇から平幕に陥落したものの、着実に地力をつけているのは衆目の一致するところ。 館内を沸かせる熱戦となった。 琴櫻の立ち合いは非常に良かった。その後も右手で相手ののどを、左手で脇の下を押しながら2歩目3歩目と足が前に出ていて良い流れだった。 ただ、①相手がそののまま押し出せる相手かどうかの見極めが甘かった。②突き押しはあくまでも相手の上体を起こすことによって右を差しやすくするために使うべきだった。③左四つになってしまった。④巻替えが正直すぎた。王鵬は完全に予想していた。巻替える前に相手の重心を崩す動きやフェイントが欲しかった。 取組後のインタビューで王鵬は「我慢が出来た」「自分のほうが体勢が低かった」と勝因を述べた。 今日の琴櫻は敗れたものの、直近2場所で見せたような脆い負け方ではなかったので落胆するのはまだ早い。 先場所新...

Grand Sumo 2025 May Tournament Day1~ Onosato Starts With a Win!

 This tournament, the wrestler drawing the most attention from sumo fans is undoubtedly Onosato, as he pursues promotion to yokozuna. His Day 1 opponent was Wakamotoharu. Although Onosato held a 4-2 edge in their past head-to-head record, the bouts had often been close, making Wakamotoharu a dangerous foe. They typically engage in kenka-yotsu—a clash of opposing grips—which has led to Onosato frequently losing the sashite battle and being forced into difficult situations. For Onosato to reach yokozuna status, he must overcome two major challenges: Never lose the sashite battle, and demonstrating effective response strategies when he loses the sashite battle. As such, today’s bout carried significant weight.  (※ sashite : Inserting one's arm under the armpit or inside position of an opponent, or the inserted arm ) Onosato’s game plan was clear: rather than getting caught up in a sashite battle, he prioritized forward momentum and pressure. He opened with a double-hand thrust (morote...